年金は持続可能か
選挙のたびに争点になる「年金問題」。年金への関心は、現在もらっている高齢者の人だけのものではありません。むしろ若い人にこそ関心を持ってもらいたいテーマです。
なぜでしょうか。それは現在の年金制度が、「賦課方式」と呼ばれる現役世代が納めた保険料が原資となる仕組みになっているためです。
若い人が、将来高齢者になったとき、保険料を納めてくれる人はどれだけいるでしょうか。超少子高齢社会は、さまざまな問題をはらんでいますが、特に年金問題は、早いうちから手を打たないと、あなた自身、またはお子さんやお孫さんの世代まで、ずっと不安を抱えながら生活をしなければいけない問題なのです。
「100年安心」をうたった年金改革
2004年、厚生労働省は年金の「100年安心」をうたった改革を打ち出しました。基本的な視点は「年金金額重視型」から、「負担抑制重視型」への切り替えです。年金を納める若い世代の減少が今後さらに見込まれるため、賦課方式を維持した状態では、年金の財布はどんどん先細っていきます。だからといって、国民の負担を無限に広げるわけにはいかないので、「みんなの負担を抑える代わりに、もらえる年金も少し減らすけど、いいかな?」というものとなりました。
この改革では、年金制度の安定のために、物価などの経済情勢だけでなく、人口などの社会の推移も含めた全体を見て年金の支給額を決める「マクロ経済スライド」の導入も図られました。
「社会の推移を見て、年金の支給も決める。」「みなさんの負担も抑えられます。」だから「100年安心」と言ったのです。
老後2000万円問題を覚えていますか?
前回の2019年参院選では年金問題が大きな争点となりました。金融庁の審議会が「老後は2000万円の資産を持っていないと、赤字になる」と言ったからです。
国民は敏感でした。
「おいおい、2000万円なんて持ってないよ」そう思った国民も多かったでしょう。年金を所管する厚労省は「安心」と言い、お金のスペシャリストは「不安」と言う。まるで「矛」と「盾」を使い分ける状況に、国民の不信感は高まりました。
放置すれば資産の目減りは必至?
金融広報中央委員会「2019年 家計の金融行動に関する世論調査」で示された、世代別の貯蓄額は、働きざかりの世代である40代で365万円、50代で600万円でした。(数字は中央値。中央値が実態を表すとされる)この数字を高いとみるか、低いとみるか、主観によるところも大きいと思いますが、考えておかないといけないのは、年を重ねるごとに給与が上がる時代ではないということです。国税庁が発表する「民間給与実態統計調査」を見ると、なんと1995年と比較しても2020年の給与のほうが低いという結果が出ています。右肩上がりの時代は昔のこと。民間企業で働く多くの人が思っている実感ではないでしょうか。
そう考えると働きざかり世代の貯蓄額と、老後に必要とされる2000万円のギャップはかなりありそうです。しかも超低金利時代。昨今ではエネルギー問題、ロシアによるウクライナ侵攻などで物価高騰も著しい。あなたの資産は、放置すればどんどん目減りしてしまうかもしれません。
年金はつまり収入。支出が増えれば?
年金は高齢期における収入です。いくら、「年金は100年安心ですよ」と言われても、物価高騰で節約を余儀なくされる生活費、値上げが続く光熱費、加えて医療費や介護費など、支出が増え続ければ、将来の生活試算が足元から崩れることだってあるかもしれません。受け取り可能な年金額(収入)をチェックするだけでなく、日々の生活でどれだけ払わなければいけないのか、収支バランスを、それこそ「マクロ経済」的に俯瞰(ふかん)しなければいけない時代に来ていると言えそうです。2022年の参院選では年金問題についても、真摯に議論してもらいたいと思います。
為書きでチェック
為書きは、候補者の「必勝」を祈念するものです。候補者の選挙事務所には、誰かからの為書きが並べられています。候補者だけでなく、どの政治家から応援を受けているか、あなたの思想と候補者や支援者との合致点を探る目安にもなるかもしれませんね。