10増10減 改正公職選挙法が成立
2022年11月、参議院本会議で衆議院の小選挙区の数を「10増10減」とする改正公職選挙法が賛成多数で可決、成立しました。いわゆる「1票の格差」への対応ですが、「定数の数は変わらない」「地方の声が届きにくくなる」など懸念の声もあります。今回の法律改正の本質的な問題について考えてみたいと思います。
都市部で増、地方で減 東京は5議席増
どこが増え、どこが減るのか。詳しく見ていきましょう。
議席が増えるのは次の通りです。
東京(25→30)。ほかに千葉、埼玉、愛知で各1。神奈川は2議席増えます。
減るのはどこでしょう。
宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎で各1減となっています。
増えているところを確認すれば一目瞭然ですが、東京と首都圏で議席が増えています。対照的なのは大阪の周りにある県で滋賀、和歌山が減となっていること。奈良は法改正以前にすでに定数が減らされており、そこを含めれば大阪の周囲の県はすでに衰退の傾向が明確であり、大阪と東京の力の差がより広がっていること、大都市と衛星都市との関係弱体化(大都市一極集中)を想像させる結果です。
「1票の格差」だけが問題か
各地で起こる「1票の格差」をめぐる訴訟はまだら模様ですが、政治はこの問題にナーバスです。
今回の法改正について、具体的に地方の声が届きにくくなることを証明することは難しいでしょう。しかし東京、首都圏とその他の地方との格差拡大を感じさせるには十分なアナウンス効果ががあります。地方の民意の代表として選ばれる各議員の将来は、さらなる格差是正によってその座が危うくなる議員も将来は出てくるかもしれません。
問題の本質は、東京、首都圏とその他の地方との格差拡大です。日本は長らく「均衡ある国土の発展」を目指してきましたが、人口減少を背景に都市部、特に東京への一極集中が進んでいます。「わが町に道路を、鉄道を、再開発を」と叫んできた地方の現状は荒廃したインフラの残骸。そんな未来も現実味を帯びてきました。
地方の発展へ 国会もイノベーションを
もし地方にほとんど人が住まなくなったらどうなるのでしょう?米や野菜などの食糧はどこから来ますか?東京に集まる人材はどこからやってきますか?それは、今言われている経済安全保障の国内版です。
ICTを生かした都市と地方の交流、地方の中核都市の再生、農業など第1次産業の高度化・国際化など、ハード整備に頼らない地方の発展のために国会議員は今こそ知恵を出してほしいと思います。そのためには若い人が政治に関心を持ち、国会にもにもどんどん若い世代や女性が登壇して議論しあうイノベーションを国会でも期待したいものです。